【2011年度参加報告】第2回教育ITソリューションEXPO
報告者:渡辺博芳,古川文人
2011年7月7~9日,東京ビッグサイトにおいて,リード エグジビション ジャパン主催による第2回教育ITソリューションEXPOが開催された.550社の出展があった.
7月8日には教育ITソリューション専門セミナーで,静岡大学井上春樹先生による「クラウド化によるICT導入のコスト削減」に関する講演があった.クラウドコンピューティングの流行によってクラウド化をはじめたのではなく,従来からIT基盤のアウトソーシングに向けて努力をされており,それが昨今のクラウドコンピューティングのキーワードとマッチした格好になったようだ.実施の前に,4年の準備があったとのことである.準備には,IT資産の精密な調査,環境負荷・コスト実測,新組織の創出,組織の合意形成があり,これらを2006年~2009年に進めてきた.また,クラウド化を,サーバのクラウド化,パソコンのクラウド化,ストレージのクラウド化,認証のクラウド化の4つの戦略に分け,サーバのクラウド化まで進んでいる.静岡大学のクラウド化の取り組みはFIT2011におけるCLE研究会企画セッション「学習環境のクラウド化とパーソナル化」でも紹介される.
小中学校での電子黒板の整備が進められているせいか,電子黒板の出展が多かった.短焦点のプロジェクタを使うことで,板書をするときにあまり影にならないので,使い勝手がよくなった.各社の製品は,それぞれに特徴があり,一体型は100万円程度,手持ちのプロジェクタを使用し,黒板やホワイトボードに投影するタイプは20万円程度となっている.EPSONの製品は使用前の位置合わせを自動で行えることが特徴である.RISOの製品はガラスのボードを使っている.ナリカの販売するActiveBoardは生徒用のペンもあり,2名が同時に書き込みを行える.日立ソリューションズの製品はペンと指の両方で書くことができ,スマートフォンに近い操作感を出そうとしている.各社,全体的に過去の製品よりも性能が向上している.大学教育にも取り入れてみたい.
コクヨのエアビームというレーザーを使わないプレゼンテーションのポインタも興味深かった.PCのソフトで動作するので,ポインタの色,形を自由に変えられる.9月発売,オープン価格だが1万数千円程度とのこと.Windows版しかないのが,残念.
(株)ナノコネクトのCEDPは,クラウド上で学習管理システムを提供するサービスである.サービスの利用端末としてPCやMacのほか,スマートフォン市場でシェアの高いAndroid搭載機でも利用できるという特徴を持つ.Android搭載のスマートフォンは,機能面でiPhoneと比べたとき,FLASHコンテンツが利用できたり,自由度の高いアプリケーション開発ができたりするという一般的な利点がある.この利点を教育学習活動の質の向上に向けて活用することが期待されるが,CEDPはこの活用に至るものではなかった.ただし,スマートフォンのアプリケーションとしては一般的な水準として仕上がっている印象を受けた.
オープンソース系の学習管理システムであるMoodleやSakaiのサポートサービスについての情報を得た.Moodleについては(株)ヒューマンサイエンスとアイエックス・ナレッジ(株),Sakaiについては兼松エレクトロニクス(株)という業者がサービスを提供している.ヒューマンサイエンスは,放送大学のMoodleの導入とサポートの実績がある.兼松エレクトロニクスは,法政大学のSakaiのサポートサービスをしている.また,Sakaiについては,クラウド型の利用を検討中の大学があるとのことだった.
ビジネスブレークスルー大学は,完全にオンラインで授業運営をしている.学生は,WindowsのPCやMac, iPadなどを端末として授業を受ける.受講者が講義ビデオを視聴していることを大学側が確認するために,受講者が一定時間間隔でクリック操作をすることでビデオ再生が続くという仕組みをビデオ配信システムに導入している.また,学生の本人確認のために,オンライン授業において不定期に指紋認証を実施している.