【2009年度参加報告】第3回Ja Sakaiカンファレンス

報告者:古川文人

 2010年3月16日に熊本大学工学部百周年記念会館において開催された第3回Ja Sakaiカンファレンスへ午後の部から参加した.午後の部では,1件の基調講演のあと,8件の一般講演があった.

 基調講演は,熊本大学総合情報基盤センター 教授の中野裕司先生により「eポートフォリオがもたらすICT活用教育の大変革―教授者(科目)中心から学習者中心へ―」というタイトルで行われた.講演では,1999年からの熊本大学の教育における情報通信技術(ICT)活用の歴史を振り返り,その経験からICT活用による効能は,当初狙いだった「いつでも,どこでも,ペーパレス,利便性」だけでなく「教育の高品質化,効率化,個別化,見える化」につながることが示された.さらに,WebCTのようなコース管理システム(CMS)の活用は当然有効ではあるが,コース(科目)を中心とした考え方であり,学生を中心としたサービスの提供には至っていない.その学生中心のサービスの1つとしてeポートフォリオが挙げられた.eポートフォリオとは,学生の在学中の学習成果物や活動記録をCMSなどから全自動あるいは半自動的に1カ所にまとめて収集し,それを参照できるシステムである.これにより,例えば,学生は自分のキャリアを確認したり,就職活動において自分をアピールできる情報を効率よく取得できるようになる.熊本大学では,大学院の教授システム学専攻においてeポートフォリオの活用がはじまっており,これを全学展開する計画が示された.加えて,卒業生がeポートフォリオにアクセスして在学中の記録を振り返られることなどを実現するために,大学に一度関係した者には,情報システムを生涯利用できる生涯IDを導入するという計画も示された.

 一般講演では,本学の次期CMS更新に向けて名古屋大学の以下の2件の発表が参考になった.

  • 名古屋大学情報連携統括本部情報推進部 技術職員 太田 芳博氏「名古屋大学におけるSakaiの全学運用とその課題」
  • 名古屋大学情報連携統括本部情報推進部 技術職員 田上 奈緒氏「IMSラーニングインフォメーションサービスによる教務システム・Sakai間の連携」

 名古屋大学では,CMSを2010年度からWebCT CE4からオープンソースのSakaiへ移行する予定である.移行に際しては,教員がWebCT上のコンテンツを手動で載せ替える.また,システムの構築および保守については基本的にすべて学内の技術職員のみで行う方針とのことであった.次年度からの本格運用の結果に注目したい.