【2009年度参加報告】教育システム情報学会「ラーニングデザインフォーラム」

報告者:高井久美子

 教育システム情報学会 産学連携・人材育成システム委員会の企画によるJSiSE ラーニングデザインフォーラムが 2009年5月8日(金)に電気通信大学において開催された.3件の講演とパネルディスカッションがあり,約70名の参加があった.

 近年、ヨーロッパを中心に学習者中心主義、構成主義をもとにした学習過程の設計方法としてラーニングデザイン(LD)に関する関心が高まっており,オーストラリア Macquarie大学のJames Dalziel教授を中心としたグループでは、ラーニングデザインツールLAMS(Learning Activity Management System)を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開している.今回のフォーラムはDalziel教授の来日に合わせて開催されたものである.

 フォーラムの前半では,ラーニングデザインの背景, Macquarie大学における実践についてをDalziel教授から,国内でのLAMSの活用事例を名古屋文理大学の山住富也教授から,標準化の国際的な潮流とLDとの関連,特にSCORM,SE36など関連する規格についてメディア教育開発センターの仲林清教授から講演があった.LDは優れた教授方法のアイディアの共有であり,それを実現するためにアイディアを「表現」し,「実行」し,「共有」するためのコミュニティが必要であることが背景にある.LAMSは,協調学習のためのe-learningシステムで,12種類の学習アクティビティをシーケンシャルに配置することができ,この配置(学習の流れのデザイン)を違うコンテクストでも再利用可能できとされている.

 フォーラムの後半では,LDの教育実践の活用についてのパネルディスカッションが行われ,自前のシステムでの運用の限界からLAMS導入を検討している事例や IMSのLD規格を踏まえMOT+というツールを用いて学習活動を可視化する試みなどの報告ののち,LDの位置付けや日本での展開について討論された.コミュニティの必要性,教員主導型(ID)と学習者主導型(LD)といったアメリカとヨーロッパの考え方の違い,そしてLAMSのようなツールによって簡単に蓄積が可能となった学習過程記録の活用方法がポイントとなるとされた