ニューズレター第59号(2024/11/20発行)
帝京大学ラーニングテクノロジー開発室
No.59
NEWS LETTER
発行責任者 小島 一晃
著作権教育教材の紹介
帝京大学も加入している大学ICT推進協議会(AXIES)というところがあります*1.このAXIESで著作権教育教材を作成し,無料で使用できるよう公開していますので,今回紹介させていただきます.
このAXIESの著作権教育教材開発チームにLT開発室の天野もメンバーとなっており,SARTRAS*2の授業目的公衆送信補償金共通目的事業に応募し,事業開始の2022年度から2024年度まで毎年度採択されています.事業では弁護士の監修のもとに著作権教育教材を作成し公開しています.それらはAXIESのページで閲覧・ダウンロードができます.以下,教材について紹介します.
◆教員向け教材「すごくわかる 著作権と授業」
「すごくわかる 著作権と授業」は授業をしている教員向けの教材です.略して「すごわか」と呼んでいます.著作権の基本的なことから,授業で著作物を扱う際に意識しておかなければならない法律の内容などについて,なるべくわかりやすく説明しています.冊子体のPDFファイルと,スマホ等でも見やすいレスポンシブデザインのWebサイトを公開しています.英語版もありますので,外国人教員のみなさまも,自国の法律と違う点が多々あると思いますので,ぜひ読んでいただきたいと思います.
また,学んだ内容を元に力試しができるように,Web版の方にはクイズも掲載しているのでチャレンジしてみてください.なかなか難しい問題になっており,一発で全問正解できる方は,相当の達人です.
これらの教材は,CC-BYというクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開しており,「すごくわかる著作権と授業 / AXIES / CC BY 4.0」というクレジットを表記していただければ,複製などご自由におこなっていただけるものになっています.
◆学生向け動画教材「基礎から学ぶ著作権」
「基礎から学ぶ著作権」シリーズは,学生向けの動画教材です.教材となっている22本は,「物語編」で大学生たちが著作権の問題に遭遇し,「解説編」でその問題について天の声が解説するという構成です.さらに出演俳優さんのインタビューやメッセージを加えて公開しています.
動画はCC-BY-NDという再配布自由ただし改変禁止のライセンスで配布しています.よって,動画を切り出して短くするなどの使用はできませんが,そのままダウンロードしてご利用いただくことは可能になっています.また,シナリオなどの資料はCC-BYで,複製・改変が可能となっています.ご利用の際には,動画は「基礎から学ぶ著作権 / AXIES / CC BY-ND 4.0」,シナリオ等資料は「基礎から学ぶ著作権 / AXIES / CC BY 4.0」のようにクレジットを表記することが必要です.
LT開発室のWebサイト>ICT教育支援>学習教材>著作権教育教材にリンクを貼っておりますので,ぜひアクセスしてみてください.
*1 大学ICT推進協議会(AXIES):「高等教育・学術研究機関における情報通信技術を利用した教育・研究・経営の高度化を図り,我が国の教育・学術研究・文化ならびに産業に寄与する」ことを目的とした一般社団法人です.全国の約170の大学および100弱の企業等が加盟しています.
*2 授業目的公衆送信補償金協会(SARTRAS):著作権法35条2項により,授業等で公衆送信をおこなう場合は教育機関の設置者は補償金を管理することになっています.その補償金を管理している一般社団法人です.補償金は主に著作権者に分配され,一部著作権の普及・振興活動等をおこなう共通目的事業につかうこととなっています.
ICT活用教育レポート 「メタバースを活用した授業実践」
今回は,最新技術を活用した本学での教育の取り組みとして,メタバースを活用した授業実践について紹介いたします.授業実践をされております理工学部情報電子工学科の佐々木茂先生に,お話をうかがいます.
メタバースは,パソコンやスマートフォンなどから仮想現実(バーチャル)空間を利用するためのサービスの一種です.実世界での体験が難しいことを扱うために医療や防災などの分野の教育で利用が進んでいるほか,遠隔からの授業参加の体験を拡張できるためコロナ禍以降に注目が高まっています.
メタバースをどのように授業で使われているのでしょうか.
たとえば,大学コンソーシアムとちぎの科目「デジタルコンテンツマネジメント論と技術経営論」の担当授業で,メタバースをディスカッションの題材として導入しています.授業では,まずVRChatというプラットフォームを使ってメタバースの世界を体験してもらった上で,このような技術をどういう風に使えるかディスカッションして,最後に発表してもらっています.
「デジタルマネジメント論と技術経営論」でのメタバース体験の様子
「デジタルマネジメント論と技術経営論」での体験中のメタバース内の様子
実際の体験後ですと,ディスカッションがやりやすそうですね.ほかには,どのように使われていますか.
集中講義の「デジタルマンガ制作演習」で,メタバース上のコンテンツを作成する演習をしています*1.共同で演習を運営する文星芸術大学のコンピュータ教室でVRoidというソフトウェアを用いて,アバター(メタバース内で自分自身の化身となるキャラクター)を作成します.その後の本学コンピュータ教室での演習では,作ったアバターをメタバースにアップロードして,動作を確認するといったことをしています.
「デジタルマンガ制作演習」での演習の様子
学生さんの反応はいかがですか.
2023年度は,受講人数が多かったですね.文星芸術大学のコンピュータ教室の席がいっぱいになっていました.本来,教室には40台のPCがあるところを50台に増やして対応したので,先生がいるところがないくらい入ってましたね.
自分で作ったものが仮想空間で動作するところは,学生にとって魅力的なのかも知れないですね.メタバース上で授業をすることもあるのでしょうか.
その集中講義の最終日に大雨が降って,授業を中止することになったんですが,せっかくメタバースがあるので,自分の作ったアバターで集まってもらいました.
緊急時の授業の手段として利用できる場合もあるのですね.メタバースの教育での活用について,ほかにはどのような可能性があるのでしょうか.
メタバース上での活動のログ(記録)が活用できるかも知れません.たとえば,化学物質のモデルなどの教材をバーチャルで見せたりするときに,学生が何をどういう順番で見たというログが取れます.また,メタバース上で学生同士がテキストチャットでコミュニケーションをすることがあるので,そのようなログも技術的には取得できると思います.
学習活動の記録がある程度のボリュームになると,教育学習の改善に役立てられそうですね.本日は,ありがとうございました.
一言コーナー
本号よりニューズレターのデザインを一新して,PDFデータではなくWebページで公開となりました!今後もみなさまのお役に立つコンテンツを配信していきたいと思います.
あんなに暑かった日々が急に寒くなり,秋をとばしていきなり冬がやってきた感じがしますね.今年の冬は例年より寒くなると予想されているようです.
・早めに冬物支度
・早めに風邪予防
・早めにスタッドレスタイヤ交換(宇都宮キャンパスだけ雪山?!なんてことはよくあります)
をして備えましょう.入試シーズンもいよいよ本格的に突入します.みなさまお体ご自愛下さい.