ニューズレター第60号(2025/3/27発行)

帝京大学ラーニングテクノロジー開発室

No.60

NEWS LETTER

発行責任者 小島 一晃


生成AIについての学生アンケート

 ChatGPTの登場以来,生成AIは急速に普及し,教育の場でもその活用が進んでいます.授業や学習の中で生成AIをどのように活用するかが重要なテーマとなり,本学でもポリシーが定められています.
 では,実際に学生は生成AIをどのように活用しているのでしょうか.本記事では,学生を対象に実施したアンケート結果を紹介します.
 アンケートは,理工学部情報電子工学科の3年生を対象とした『情報社会論』の授業1回目に回答時間をとって実施し,36名の回答がありました.匿名のアンケートで成績に関係ないため,なるべく正直に答えるよう説明をしました.学生がアンケートに回答した後に,生成AIについての講義をおこないました.以下,簡単に結果を紹介します.

(1)生成AIの利用経験

 情報系の学生らしく利用が多い状況となっている.

  • 「知っていて,使ったことがある」が91.9%
  • 「知っているが,使ったことはない」が8.1%
(2)生成AIを日常的に使用しているか

 (最初の設問で,生成AIがあることを「知っていて、使ったことがある」と回答した人が対象)

  • 「大学での学習や研究に利用」62.2%
  • 「学習や研究以外の私生活で利用」24.3%
  • 「いいえ(日常的には使用していない)」8.1%
(3)生成AIの使用頻度
  • 「週に数回」59.5%
  • 「月に数回」24.3%
  • 「ほぼ毎日」5.4%
(4)学習での利用経験のある生成AIのサービスについて(複数回答可)
(5)役に立った使い方(自由記述)
(6)利用の過程で注意すべきと思った点(自由記述)
  • そのまま使用すること(14件):「ハルシネーションがある」「誤った回答がある」「精度が不安定」等
  • 計算ミス(4件):「計算間違いが多い」「数学的な論理が弱い」等
  • 学習理解の阻害(6件):「そのまま写すと学習にならない」「頭に入らない」等

 アンケートの後半では村上ら[1]の作成したAI不安尺度の一部を使用し,不安について聞いてみました.不安尺度とは,不安の程度を測定する心理検査や評価尺度のことです.
 今回は16の質問それぞれに7段階で回答させ,「全くそう思わない」を 6 点,「とてもそう思う」を 0 点として合計点を算出しました.全く不安がない場合は 0 点,全てに不安がある場合の最高点は 96 点になります.
 点数分布を見ると.左寄りにかたまりができており不安はやや低めで,情報系の学生らしさが出ているとも言えるでしょう.

 使用経験がAIに対する不安に影響を与えるかを見るために,使用経験に関する質問への回答毎の学生の点数を次の表の通りにまとめました.人数が少ないため,回答による統計的な差があるかは確認していませんが,よく使用している人ほど点数が低い傾向があるように思われます.
このアンケート実施についての詳細および全ての設問は,論文[2]にまとめていますので,ご興味を持たれた方はそちらをご覧ください.

[1] 村上 祐子, 稲垣 知宏:大学初年次生のAI不安とデータサイエンス教育への影響,情報教育シンポジウム論集2024,168-175, 2024-08-03

[2] 天野 由貴: 情報系大学生を対象とした AI の意識調査および授業実践,大学ICT推進協議会年次大会論文集2024, 10PM3P-11 (2024-12)

ICT活用教育レポート 「理工学部から他キャンパスへの展開(全学開講科目の設計と運用)」

 今回は,全学で開講されている科目「データサイエンス・AI入門」を取り上げます.
 2022年度より開講した科目ですが,LMSとオンライン授業を活用して,ほぼ同じ内容の科目を本学の全キャンパスに展開しています.本科目は現代社会のリテラシーであるデータ利活用の基礎について学ぶことを目的としており,文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(*1)」のリテラシーレベル(*2)の認定を受けています.
 お話は,本科目の立ち上げに携わった,宇都宮キャンパスリベラルアーツセンターの横山明子先生にうかがいました.

◆データサイエンス・AI入門が開講されるまでの経緯
横山先生

政府の「AI戦略2019」(令和元年6月統合イノベーション戦略推進会議決定)において,高等教育段階のリテラシー教育として「文理を問わず、全ての大学・高専生(約50万人卒/年)が,課程にて初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得」することが具体目標に設定されました.
これをふまえて,2020年4月に数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムにより,モデルカリキュラム(*3)が策定されました.それと同時に文部科学省による認定制度が創設されました.

そこで,本学では2022年度の授業開講を目指して,2021年度に荒井正之理工学部長を座長として,情報電子工学科と宇都宮キャンパスリベラルアーツセンター教員でワーキンググループを組織し準備が始まりました.
まず,このリテラシーレベルの内容は専門レベルではなく教養レベルですので,既存の科目に必要な内容を加えるよりも新しく科目を開講することとしまして,開講時期は1年次の後期,授業区分は総合基礎科目(2025年度からは共通教育科目)に決まりました.
この科目は,宇都宮キャンパスでは2022~2024年度は選択科目ですが,理工学部では2025年度からは必修科目となります.経済学部地域経済学科では2024年度から必修とし,医療技術学部柔道整復学科も選択科目として,履修できる体制になっています.さらに,2022年度から板橋キャンパス,八王子キャンパス,福岡キャンパスの全ての学部で選択科目として開講しています.

◆授業計画の特色(非同期型のオンライン授業と対面授業)
横山先生

授業計画は,理工学部のワーキンググループで作成しました.
モデルカリキュラム(*3)に準拠して,
「導入(社会におけるデータ・AI利活用)」(第1回~第5回),
「基礎(データリテラシー)」(第9回~第15回),
「心得(データ・AI利活用における留意事項)」(第6回~第8回)
の3つのパートを1科目(2単位),15回で実施します.授業の担当は各学科の先生にお願いし,先生方の授業準備の負担も減らすという方針に基づき,非同期オンラインの授業コンテンツは,理工学部のワーキングのメンバーが作成しました.第8回と第15回は対面授業による演習(8回目は反転授業としてグループディスカッション)で,演習以外の回はLMSを活用した非同期のオンライン授業としました.

横山先生

授業は学科ごとに開講していますので,第5回目のコンテンツ(「データ・AIの最新動向と専門領域への適用事例」)は,学生の関心に沿って,例えば,機械・精密システム工学科では自動車に関する内容にするなど,各専門分野の最新動向のコンテンツを各学科の先生に作成していただいています.
さらに,このデータサイエンスに関する認定制度では,実社会で起こっている問題の解決方法を学ぶ目的で,企業などで実際に使用しているデータを使った演習が必要になります.そのため,宇都宮キャンパスでは,企業と協定を結んで,企業から講師を招聘し,履修者全員を地域棟101(宇都宮キャンパスの大講義室)に集めて,演習を行っています.他キャンパスでも,それぞれの特色を生かした演習を行っています.

◆評価方法の工夫
横山先生

評価に関しては,各回のテスト結果を50%,第8回目(ディスカッション後にレポート課題を提出)を25%,15回目(テスト課題)を25%の累積得点としました.8回目以外のテストは各5問が出題され,自動採点としました.受講者全員が理解を深め,できるだけ単位取得をしてほしいですので,このテストの受験回数は無制限にしています.

◆宇都宮キャンパスから全学への展開
横山先生

当初は宇都宮キャンパスのみ開講の予定でしたが,全キャンパスで実施するということになりました.そのため2022年度は,八王子キャンパスの文系学部では,宇都宮キャンパスと同じ内容で授業を開講しました. 板橋キャンパスと福岡キャンパスの医療系学部では,もともと情報処理や医療統計などで統計の授業を開講していましたので,その授業の中にAIの利活用のコンテンツなどを入れて実施していただきました.2023年度からは,理工学部と同様の「データサイエンス・AI入門」をLMSを活用して全学で開講しています.
このように,全学で基本的に同一の内容で授業を実施しますので,理工学部のワーキンググループで全コンテンツ作成し,全キャンパスの先生方に提供しています.具体的には,LT開発室の協力をいただいて,全コンテンツをLMSのマスターコースに掲載し,各学科でマスターコースの内容をコピーして活用していただいています.
さらに,全学で同じコンテンツを学修させているため,特に八王子キャンパスの文系学部では,後半の「基礎(データを用いた実習)」の成績に低い傾向がみられたのですが,その原因がExcelの使用に慣れてないためと考えられました.そのため,本年度はその学修を補完する基本的なコンテンツをさらに提供し,それを最初に学んでから本来のコンテンツの学習をすすめるように推奨した結果,成績が上昇したそうです.
また,2023年度に文部科学省の認定を受けましたので,現在ではこの科目を履修した学生にオープンバッジを配布しています.

◆今後に向けて
横山先生

この科目を全学で実施するために,荒井正之学部長を座長として,各キャンパスから委員を出していただき全学のワーキンググループを組織しています.なお,このワーキンググループでは,この授業の自己点検・自己評価を行い,報告書(*4)を公開しています.学生の関心とモチベーションも高いです.
この科目は、2022年度は選択科目で希望者の履修ですので,受講者も非常に少なかったですが,今後この授業を全学で必修にするために検討を行っています.特に八王子キャンパスは3000人超の1年生がおりますので,対面授業の実施は難しく,今後どのような形式で授業を展開していくかが大きな課題です.扱うデータも文系学部の専門に即したデータを扱うことについても提案がなされています.
さらに,2024年2月に,現在の初等中等教育の教育内容を踏まえて,リテラシーレベル及び応用基礎レベルのモデルカリキュラムの改訂が行われています.今後,この授業の内容の改訂が必要になると考えています.

 

以上のように,「データサイエンス・AI入門」はモデルカリキュラムに従って各授業回の内容を明確に設計し,学科をまたいでLMSの授業コンテンツを共有することで,全学展開を実現しています.その一方で,各学科の専門性に合わせる回を設定したり,文系では学生の実態を踏まえて独自の補完するコンテンツを作成するなどさまざまな工夫が行われています.

LMS Tips

上記のTipsをクリックすると詳細が開きます.Tipsは帝京大学LMSサポートサイトからご覧いただけます.

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