【2003年度参加報告】IT教育支援協議会第2回フォーラム「遠隔教育における著作権とプラットフォームについて」

報告者:高井久美子

 IT教育支援協議会第2回フォーラム「遠隔教育における著作権とプラットフォームについて」は,平成15年12月1日 東京国際交流館において開催された.遠隔授業が今後大学として当たり前のサービスとなりうる可能性を強く印象付けられた.

 「eラーニングと著作権  遠隔教育を中心に」として,弁護士で 近畿大学・奈良先端化学技術大学院大学の岡村久道先生から平成16年1月1日施行の改正著作権法その他,遠隔教育のコースに関連して留意すべき点について講演があった.改正著作権法の要点としては,教育機関における複製等について定めた35条1項で,従来は教師のみが可能だった複製を学習者自身もできるようになった.また同35条2項では,遠隔授業を受ける者への公衆送信をできるとした.しかし,講義をサーバーに蓄積して別の時間に視聴する形態や,聴衆がいないスタジオ等の収録物が該当せず,現状の遠隔教育のニーズにあったものとは言いがたい.

「著作権に関する現状と取り組み」として,メディア教育開発センターの青木早苗先生から,著作権に関連するデータを蓄積した「教育メディア著作権関連情報データベース」の紹介,教育コンテンツなどの利用許諾手続きを簡便にする「著作物等流通促進システム」の紹介および「高等教育における引用行動に関するアンケート調査の結果」の報告があった.


 「遠隔教育におけるプラットフォームについて」として,現状や取り組みについてパネラーから以下のような現状報告.実践報告・問題提起がなされた.その後,ディスカッションの予定だったが,時間切れで報告のみとなった.

(1)大学における情報基盤としてのコース管理システムについて
名古屋大学 梶田将司先生
(2)岐阜大学における教育情報支援システムについて
岐阜大学  加藤直樹先生
(3)東北大学インターネットスクール(ISTU)について
東北大学大学院 三石大先生
(4)工科系大学教育連携協議会における同期型WBLプラットフォーム
電気通信大学 菅原真司先生
(5)exCampuによるeラーニングサイトの構築について
メディア教育センター 中原淳先生,西森年寿先生

・e-learningとは,学習を総合的に支援するものであり,教育にかかわるすべての教員に関係すると考える.
・北米では,個々の教育機関で作成したものを大学を越えて簡単に利用できる仕組みの開発が,財団からの大型研究助成を受けて大学,民間の共同で進められている.わが国ではどう取り組むか.
・TV会議など遠隔授業からe-learningへの取り組みをはじめたが,非遠隔授業に対する学習支援へと広がりを見せている.
・学内はもとより,大学間等連携 コンソーシアム方式,単位互換,連携,連合大学院など,学外での活用に向けてこのようなシステムは有効と考えられる.
・改正著作権法による遠隔授業における「複製」は同時受講を要件としており,遠隔授業の現状にあっていない.
・遠隔授業は,通学による就学が困難な社会人大学院生などからのニーズが非常に高く,今後は大学として当たり前のサービスとなる可能性がある.
・e-learningにはコストがかかる.誰のために,どんな内容を,どのように提供するか,目的と手法を模索する必要性を感じる.
・工学系の11大学で協定を結び,大学院レベルの遠隔教育による単位互換を実践している.遠隔授業でもレーザーポインターでの指示がわかりやすいようなシステムを開発,製品化した.
・e-learningサイトを構築し,大学と社会のさまざまな人々とのつながり(回路)を作ることで,両方のコミュニティを活性化し,学びの機会と質を向上させることを試みている.