【2007年度参加報告】FIT2007 第6回情報科学技術フォーラム
報告者:渡辺 博芳,古川 文人
情報処理学会,電子情報通信学会 情報・システムソサイエティ,電子情報通信学会 ヒューマンコミュニケーショングループの共催するFIT2007 第6回情報科学技術フォーラムが,中京大学豊田キャンパスにおいて開催され,その開催期間の2007年9月5~7日のうち9月6, 7日の2日間に参加した.
本フォーラムのプログラムの詳細は,http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/fit/fit2007/index.html から得られる.以下に,参加したイベントの概要を報告する.
9月6日には,情報処理学会の2つの研究会(情報システムと社会環境研究会,コンピュータと教育研究会)が共催する「教育・情報システム論文執筆ワークショップ」が,午前・午後の2部構成で開催された.午前の部では,まず,東海大学の辻先生が,「情報処理学会論文誌」原稿執筆案内をもとに,論文作成についての基本的な内容について説明した.次に,同志社大学の金田先生が,論文誌「新たな適用領域を切り開く情報システム」特集号を,東京農工大学の中森先生が教育特集号をそれぞれ統括した.さらに,情報処理学会フェローの神沼先生が論文作成における課題を整理した.午後の部では,参加者全員が,論文誌へ投稿する上で問題のある論文のサンプルを査読して,意見交換を行った.
9月7日の午前には,「良い論文を書くためには,伝わる日本語文章を書くためには」というテーマで,電子情報通信学会 情報・システムソサイエティのフェロー&マスターズ未来技術時限研究専門委員会の企画したイベントが開催された.このイベントでは,初めに,早稲田大学の岡田先生から,査読論文として必要な「新規性・有効性・信頼性」を如何に表現するか,という基本的な問題と,良い科学技術論文の書き方,読み手に伝わる文章の書き方,の基本指針について,大学院学生等を指導する教員などを対象にした説明があった.次に,愛知工業大学の阿部先生から,学術論文を含む一般の文書作成時に必要な「他人に伝わりやすい文章を書く」技術について,人と人とのコミュニケーションの過程を出発点にした説明があった.
9月7日の午後には,「eポートフォリオによる新たな教育・学習環境の構築と実践」というテーマでコンピュータと教育研究会・CMS研究会共同企画イベントが開催された.このイベントでは,信州大学の東原先生・谷塚先生が初等中等教育・教師教育における長年のeポートフォリオ研究を紹介され,日本女子大学の小川先生がマルチキャリアパス支援におけるeポートフォリオ活用例を紹介された.さらに,名古屋大学梶田先生がOSP(Open Source Portfolio)の動向について紹介された後,フロアーを含め,eポートフォリオについての意見交換を行った.多くの大学で,eポートフォリオの重要性・必要性を感じながらも,もう一歩が踏み出せない感があった.それは,ポートフォリオが個人情報であることから,その扱いが難しいこと,一つの授業での実践ではあまり意味がなく,組織として実践が重要であり,その体制作りが難しいことなどが主な理由であるように思われた.しかし,eポートフォリオを扱うシステムがいくつも現れ,先進的な大学では活用の模索を開始していることから,今後とも,注目すべき分野であると思われる.