【2008年度参加報告】教育著作権セミナー「大学等におけるICT活用教育と著作権」
報告者:高井久美子
「教育著作権セミナー 大学等におけるICT活用教育と著作権」は,独立行政法人メディア教育センター(NIME)と東京工業大学の共催で,2008年7月8日(火)東京工業大学において開催された.講師は,2005年に本学の著作権セミナーで講演された尾崎史郎メディア教育開発センター教授(元文化庁著作権課マルチメディア著作権室長)であった.同様のセミナーが今後,四国・九州・北海道など全国各地で開催される予定である.
第1部では,教育関係者が知っておきたい著作権の基礎知識として,「著作物」「著作者」「著作者の権利」等について概観した後,第2部では著作物の権利制限(著作者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合)について判例を交えて詳細な説明があった.大学における教育にかかわる条文,特に教育機関における複製や入試問題での利用などについては,具体的な説明があった.
特に,条文中に「多数」「多少の」とある場合は,違法かどうかの判断がつきにくい上,教育利用に関する訴訟は未だ例がない.そこで,商業出版社等を相手取った訴訟の判例を参考に著作権の侵害となりうるかどうかを推測する以外にないということであった.一方,急速に広がりを見せているサーバ蓄積型のいわゆるeラーニングにおける利用は,公衆送信権に関して教育目的利用の権利制限規程が未だ定められていないため,著作者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合にはあたらない.この法改正に関して,著作権審議会は,教育機関サイドからの具体的な提案を待っている状態である.米・独においては,2003年から2006年にかけてコピープロテクション技術の導入や補償金の支払いなどを定め,利用を可能にしているとのことであった.
教員が作成した教材コンテンツの権利の帰属についても言及され,取り扱いの方法を定めておく必要性が今後高まることが予想される.
著作権に関して参考となるサイトとしては,以下が紹介された
- 文化庁 著作権Q&A
- (社)著作権情報センター 著作権Q&A
- メディア教育開発センター 教育著作権情報