第134回LTセミナー「大学教職員のための著作権講座 ~教育現場における著作物の取り扱い~」
第134回セミナーでは,日本著作権教育研究会の内田弘二氏を講師にお招きし,「大学教職員のための著作権講座」と題してご講演いただきました.
ご講演では,まず著作権制度の概要,著作物の定義と許諾なく使える著作物についての解説がありました. 教育機関においては,教材として他人の著作物を利用することがあります. 著作権法35条の教育機関における複製等および38条の営利を目的としない上演等に関して,具体的例を示しながら,著作者の許諾なく著作物を使える条件についての解説がありました. さらに,教材作成の際に著作権法32条に基づく引用を利用する可能性について触れ,適切な引用のポイントについて解説がありました. 以下に35条,38条,32条について述べられたポイントを紹介します.
著作者の許諾なしで著作物を利用できるケースのひとつ,著作権法35条の教育機関における複製等に関しては,複製の目的が「授業の過程における使用に供する」とされています. 次の授業で使うことを前提としているので,事前学習のための複製は可能ですが,宿題は授業の過程における使用と認められないため複製できないとの見解が示されました.
著作者の許諾なしで著作物を利用できる他のケースとして,著作権法38条の営利を目的としない上演等に基づき,金品の徴収がない,演者に報酬が支払われないなどの適用条件を満たした場合に,上演,演奏,上映,口述が可能です. これらの上演等の様子をWebページへ掲載したりDVDに複製する場合は,許諾が必要となります. 35条及び38条により,授業において他人の著作物をスライド等で提示することは可能ですが,スライド等をサーバーへ載せることは違法となります.
さらに著作者の許諾なしで著作物を利用できるケースとして,著作権法32条に基づく引用があります. 教材作成の際に適切な方法で引用がなされていればサーバーへの蓄積も可能であることが指摘されました. その際,自分の著作が主で引用の部分が従であるいわゆる主従関係が成立していることや,引用することに必然性があることが重要となります. さらに,引用の際には著作物を改変することがないように注意しなければなりません.
講演後の質疑応答では,国家試験問題の過去問を教材として利用する場合についての質問がありました. それに対して,問題に対する著作権は留保されているが教育目的の使用は可能であること,問題全体は著作物として扱われるがこれをばらばらにした単体での問いには著作権がないとの回答がありました. さらに,セミナー終了後にも,講師の先生を囲んで熱心に質疑が行われ,著作権の正しい理解への関心の高さが感じられました.
参加者の人数
開催日:2018/02/26(月) 13:20 ~ 14:50
教職員 | 院生・学生 | 合計 |
24(22)名 | 2名 | 26(22)名 |
セミナーコンテンツ
開催案内
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配布資料・講演動画
配布資料や講演動画はLMSのコミュニティ「教職員のひろば」内,LTセミナー資料に掲載しています.