2018年度 研究会等報告

第9回教育ITソリューションEXPO

報告者:渡辺博芳,古川文人

 2018年5月16日(水)~18日(金)に,東京ビッグサイトにおいて,リードエグジビションジャパン株式会社主催による第9回教育ITソリューションEXPOが開催された.
 本展示会には,約700社の出展があった.また,公開セミナー「アクティブラーニングと講義ビデオの活用」の講師を渡辺LT開発室長が務めた.

第9回 Japan Blackboard User Group 会合

報告者:渡辺博芳,小島一晃,渡部里美

 2018年5月19日(土)に,拓殖大学 文京キャンパス(東京都文京区)において,第9回 Japan Blackboard User Group 会合が開催された.Blackboard導入済みの大学関係者やサポート企業の方など約20名の参加があった.
 会合では,拓殖大学 総合情報センター長,工学部 教授の渡辺 裕二先生のご挨拶の後,ユーザグループの情報交換の場であるKnowledge Communityサイトの紹介と交流活性化の案が提案された.次に,Blackboard Learn活用事例として,拓殖大学 小林先生による「拓殖大学におけるBlackboard Learnの活用」,本学 渡辺博芳教授による「帝京大学理工学部におけるルーブリックの活用事例」の講演があった.続いて,Blackboard社のSusan D'Aloia氏による「学生が理解しやすいルーブリックの作成」と題したワークショップが行われ,最後にアシストマイクロ社から,今後のBlackboardの製品動向についての紹介があった.第10回のJBUGは帝京大学宇都宮キャンパスで開催される予定である.

カナダの大学におけるAL教室視察

報告者:渡辺博芳

 2018年5月22日(火)〜27日(日),主体的学び研究所の花岡隆一氏のアレンジにより,カナダのQueen’s University と McGill Universityのアクティブラーニング(AL)教室を視察した.帝京大学高等教育開発センター教育方法研究支援室の宮原俊之准教授,ムロオシステムズの向修広氏が同行した.
 Queen’s Universityでは,Andy Leger 准教授の案内でICTを活用していないAL教室とICTを活用したAL教室を視察した.昼食では,副学長 (Teaching and Learning)の Jill Scott 氏と懇談した.その後,教室のリノベーションを進めるワーキンググループメンバーからヒアリングを行った.夕食ではICEモデルの提唱者Sue Fostaty Young 教授と会食した.2日目にはBrian Frank教授の案内で,工学系の建物でのAL教室を視察し,建設中の建物内のAL教室の構想の説明を受けた.
 McGill Universityでは,Adam Finkelstein氏から説明を受けた後,同氏の案内でAL教室を視察した.ここでは,地学系のAL教室と化学系のラボなど,特定用途の施設も見学できた.その後,Adam Finkelstein氏,Laura Winer氏,Carolyn Samuel氏と懇談した.
 いずれの大学も歴史のある大学で,伝統ある建物の一部をリノベーションする形で,教育学習空間の向上を狙って整備を進めていた.その際にALに特化した教室だけでなく,講義とALの両方がやりやすいという視点で整備している教室もある.整備にあたっては,教員,教務,教室管理,IT部門など関連する部署からの方々(Stakeholder)でワーキンググループを構成し,どの教室をリノベーションするかの優先順位付け,どのようにリノベーションするかを議論して進めていたことが印象的であった.McGillの方はワーキンググループに学生の代表も入っているとのことだった.

学修・研究支援センター開設記念シンポジウム

報告者:高井久美子

 2018年6月16日(土),八王子キャンパスソラティオスクエア地下2階小ホールにおいて,帝京大学学修・研究支援センター開設記念シンポジウム,帝京大学高等教育開発センター教育関係共同利用拠点事業「ジョン・タグ博士×ディ・フィンク博士対談 ~「学習パラダイム」転換後の教育と学習を考える~」が開催された.
 ディ・フィンク博士とジョン・タグ博士による講演のあと,両博士と松本美奈読売新聞社専門委員,土持ゲーリー法一帝京大学学修・研究支援センター長によるパネルディスカッションが行なわれた.
 ディ・フィンク博士の講演は,「学習パラダイム」を受けてFDはどうあるべきかと題したもので, FDの本質は,よりよい学習の実現であり,学習の「質」が大切であるとした.また,日本でFDが重要である理由として,これからの社会を形成していくうえでは質の高い高等教育を受ける必要があること,また,改善を継続させることが重要であること,自分で学ぶ力を身につけることが必要であることの3点を挙げ,そのためには教員も学生も変化しなければならないとされた.
 ジョン・タグ博士の講演は,アメリカにおける「学習パラダイム」の現状と課題と題したものであった.学びに対する表面的なアプローチと深いアプローチがあることを示し,表面的なアプローチは,モチベーションに対してcool(あまりよくない)な作用が,深いアプローチはhotな作用があるとした.そのうえで,モチベーションを高く維持するためには,学習者が何を学ぶかではなく,どれだけ深く学ぶかについて注意を払うことが重要であるとした.
 続くパネルディスカッションでは,学習者が自らの学習について学ぶことや,目に見える有形のものでないインセンティブを与える方法,学習者の省察をコースの一部として取り入れる方法などについての討議がなされ,学習者中心のパラダイムの考え方とその実践についてのヒントが披露された.パネルディスカッションは,講演者のお二方は壇上ではなくフロアにおりて発言されており,参加者との距離の近いところで活発な議論がなされた.最後に,松本美奈読売新聞社専門委員,高等教育開発センター長の土持ゲーリー法一先生から総括が述べられた.

Teaching & Learning Forum 2018 Tokyo

報告者:渡辺博芳,小島一晃

 2018年8月31日(金),ベルサール八重洲において,本学のLMSを提供しているBlackboardとLMS保守業者であるアシストマイクロ株式会社が主催するTeaching & Learning Forumが開催された.
 フォーラムでは「様々なメディアを活用した21世紀の高等教育について,改めて考える」をテーマに,4件の講演が行われるとともに,1件のワークショップが開催された.講演では今後の大学教育のあり方が広く議論されるとともに,大学などにおけるICTを活用した教育普及・推進の実践例の紹介や,Blackboardから教育におけるメディア活用や新しい教育実践方法の紹介などが行われた.ワークショップでは,アウトカムとコンピテンシーを基盤とする教育と学習評価について学ぶ参加型の講演が行われた.

平成30年度教育改革ICT戦略大会

報告者:渡部里美

 2018年9月4日(火)~6日(木)の3日間,アルカディア市ヶ谷において,私立大学情報教育協会主催による平成30年度教育改革ICT戦略大会が開催された.今回のテーマは,「社会の変化を展望した人材教育とICT活用の強化拡大」であった.
 1日目は全体会として,「高等教育政策の動向」「第4次産業革命時代の人材教育」「データサイエンスの人材育成」「問題発見・解決力,創造力等を促進するICT活用授業の提案」「教育の情報化推進に関する著作権」を題目とした講演・シンポジウムが行われた.2日目はテーマ別意見交流として,「Moodle, Googleによるeラーニング・ICT活用授業の効果と今後の展開」「反転授業の導入と効果及び展開」「モバイル・SNSを活用した双方向型授業の導入と展望」「問題発見・解決思考の情報リテラシー教育モデルの理解と実現に向けた対応策の考察」をテーマとした4つの分科会によるパネルディスカッションが行われた.3日目は各教員の取り組みについての88件の大会発表が4会場に分野ごとに分かれ行われた.また,2日目,3日目においては大学・企業連携によるICT導入・活用事例についてのポスターセッションが同時開催された.
 12年後に到来する超スマート社会を展望するなかで,これからの人材教育について認識の共有を通じて,問題発見・解決力,価値創造力,情報活用力の向上を目指したまなびの変革,授業でのICT活用の効果と普及推進に向けた課題などについて議論された.また,著作権法改正が大学教育に与える影響として著作権法改正の動向が報告された.

教育システム情報学会第43回全国大会

報告者:渡辺博芳,小島一晃,古川文人,高井久美子

 2018年9月4日(火)~6日(木),北星学園大学において,教育システム情報学会(JSiSE)第43回全国大会が開催される予定であったが,北海道胆振東部地震の影響により9月6日の大会3日目は中止となった.本大会では,基調講演,公開シンポジウム,企業セッションのほか,8つの企画セッションでの63件の発表,一般セッションでの118件の口頭発表,47件のインタラクティブ発表が予定されていた.
 大会初日には,会長の仲林清先生による「続々.イノベーションのジレンマ」と題した基調講演が行われた.2日目には,産学連携イベントとして「産学連携からみた教育・学習支援システム研究の今と5年後10年後」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた.
 本学からは報告者の他,溝口佳宏准教授,水谷晃三講師,藤平昌寿事務職員が参加し,以下の発表を行った(大会3日目中止も含む).

  • 高井久美子,荒井正之,蓮田裕一,水谷晃三,佐々木茂,渡辺博芳,初年次 PBL 科目「プロジェクト演習」の設計と授業実践織的な支援の初期検討
  • 志賀栄文,渡辺博芳,工程表を活用した学習管理手法へのゲーミフィケーション導入の試み
  • 龍則道,古川文人,渡辺博芳,臨床工学技士国家試験対策のための Moodle 向け問題入力補助機能の提案
  • 藤平昌寿,対話型コミュニケーションにおける意識変化の調査手法に関する考察

著作権法第35条の一部改正に関するシンポジウム

報告者:渡部里美

 2018年10月26日(金),東京国際交流館 プラザ平成国際交流会議場(東京都江東区)において,一般社団法人 日本著作権教育研究会主催による著作権法第35条の一部改正に関するシンポジウムが開催された.
 平成30年度通常国会において著作権法の一部を改正する法律,学校教育法等の一部を改正する法律が制定され,今回のシンポジウムは,その著作権法第35条(教育の情報化に対応した権利制限規定等)を中心に行われた.文化庁 著作権課による著作権法改正についての概略と日本文藝家協会による著作権法改正がもたらす可能性が基調講演として行われた.その後,大学教員や出版社の方も加わり,「35条改正で教育現場はどう変わるか」と題してパネルディスカッションが行われた.
 基調講演,パネルディスカッションを通して,教育関連部分において著作権法がどのように改正され,どのようなことができるようになったのかを細かく説明された.また,施行日は改正内容により違うが,教育の情報化については,権利制限規定等の整備を待ってからとなるため2020年4月1日の施行を目指しているとのことであった.

大学ICT推進協議会2018年度年次大会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 2018年11月19日(月)~21日(水),札幌コンベンションセンターにおいて,大学ICT推進協議会2018年度年次大会が開催された.3日間の会期を通じて,62団体による78ブースの出展と1,100名の参加があり,2件の基調講演のほか,一般セッション,企画セッション,ポスターセッション,出展者セミナーが行われた.
 EDUCAUSEのPresident・CEOであるJohn O'Brien 氏による基調講演「The 20th Anniversary of EDUCAUSE: Looking Back and Looking Forward」では,高等教育を取り巻く環境の激変の中でICTの役割を位置づけ戦略的に取り入れていく方向が示された.札幌市立大学理事長・学長の中島秀之氏による基調講演「AI時代の人材像とその教育」では,AI技術の実用に伴う社会の変化と今後の教育との関連が示された.一般セッションでは,高井久美子講師が「ティーチング・ポートフォリオの更新に向けた日常的な教育活動の情報整理ツール」について発表を行った.

The 26th International Conference on Computers in Education

報告者:小島一晃

 2018年11月26日(月)~30日(金),フィリピンのBayanihan Center, ManilaにおいてThe 26th International Conference on Computers in Education(ICCE)が開催された.
 今回の会議のテーマは Towards a Technology-Enhanced Education Ecology for Inclusive Learning であった.本会議は例年通り「Artificial Intelligence in Education/Intelligent Tutoring System and Adaptive Learning」「Computer-supported Collaborative Learning and Learning Sciences」「Advanced Learning Technologies, Open Educational Content, and Standards」「Classroom, Ubiquitous and Mobile Technologies Enhanced Learning」「Digital Game and Digital Toy Enhanced Learning and Society」「Technology Enhanced Language Learning」「Practice-driven Research, Teacher Professional Development and Policy of ICT in Education」の7つのサブカンファレンスから構成され,教育におけるICT利用を軸とする広範な領域の発表,議論がなされた.
 また,各サブカンファレンスのテーマに関連する4件の基調講演と3件の招待講演,3件のパネル討論が設けられるとともに,本会議前のイベントとして3件のチュートリアル,15件のワークショップ,その他Doctoral Student Consortia,Early Career Workshop,Student Wing Workshopが開催された.本学からは小島一晃講師が,ワークショップ「The 11th Workshop on Technology Enhanced Learning by Posing/Solving Problems/Questions」において「Preliminary Study on Fostering Computational Thinking by Constructing a Cognitive Model」の研究発表を行った.
 講演では,教育におけるAI技術利用,computational thinkingやSTEMの教育支援,その他ICTやモバイル機器の教育利用など,最近の教育学習支援システムに関する広範な話題が提供された.一般発表においても,教育学習支援システムやその実践利用,学習者分析などを中心として,教育におけるICT利用についての情報交換が行われた.

広島大学ICT活用教育シンポジウム

報告者:古川文人

 2019年2月21日(木),広島大学情報メディア教育研究センター本館セミナー室において,広島大学教育室eラーニング推進会議主催の広島大学ICT活用教育シンポジウム「高等教育における必携PC活用を考える」が開催された.
 本シンポジウムでは,主旨説明のあと,広島大学,九州大学,長崎大学,金沢大学の4大学の必携PCについての事例が紹介された.
 その後のパネルディスカッションでは,PC必携により可能になることとして,LMS,eポートフォリオ,電子書籍活用の促進,プログラミングやデータ処理などの情報系の授業が一般教室でもできるようになることが挙げられた.また,学習のために必携化する端末は,PCではなくスマートフォンでもよいが,PCが業務を支える主要なツールとして実社会で使われているため,PCを使いこなせるようにして学生を卒業させることが大学としての責務という意見が出された.

情報処理学会第149回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 2019年3月2日(土)~3日(日)に京都情報大学院大学 百万遍キャンパス(京都市左京区)において,情報処理学会コンピュータと教育研究会第149回研究発表会が開催された.研究論文セッション3件,学生セッション6件,一般セッション11件の発表があった.残念ながら3件の発表取消があった.
 プログラミング教育が多かったが,著作権,授業設計と評価,幼児教育,作文教育,PBLにおける学生の評価,コンピュータネットワーク教育,授業支援のためのアノテーションツールなど多岐にわたる研究発表があり,興味深かった.特に一般セッションにおける学生の発表,学生セッションの発表に優れた研究発表が多く,活発な議論が行われた.

情報処理学会第81回全国大会

報告者:渡辺博芳,古川文人,高井久美子

 2019年3月14日(木)~16日(土),福岡大学七隈キャンパスにおいて,情報処理学会第81回全国大会が開催された.本学から以下7件の発表を行った.

  • 龍則道,古川文人,渡辺博芳(帝京大),臨床工学技士国家試験を対象とした過去問から複数形式の問題を生成するツールの提案と評価
  • 鈴木達也,福田望,佐々木茂(帝京大),川島徹也,後藤正晃,田中誠一(文星芸術大),3Dモデルと2D画像を組み合わせたVRマンガコンテンツ制作
  • 高井久美子,渡辺博芳,溝口佳宏(帝京大),ティーチング・ポートフォリオの更新に向けた日常的な教育活動の情報整理の試行
  • 佐々木茂,盛拓生(帝京大),鈴木崇(SMATグループ),マルチメディア系演習環境のためのシステムデプロイの最適化に関する研究
  • 林欣,渡辺博芳,高井久美子(帝京大),志賀栄文(茨城県立高萩清松高),家庭学習を対象としたゲーミフィケーションのための学習実績管理システム
  • 大川内隆朗(帝京大),年表型インターフェースを用いたキーワードおよび研究者検索システムの開発
  • 柏木将宏,小林直人,鎌田光宣,宮田大輔(千葉商科大),坂田哲人(帝京大),次世代情報基礎教育モデルの構築に向けた実践

情報処理学会第27回教育学習支援情報システム研究会

報告者:小島一晃

 2019年3月20日(水)~22日(金),京都大学において,情報処理学会教育学習支援情報システム(CLE)研究会の第27回研究会が開催された.今回の研究会のテーマは「ラーニング・アナリティクス(LA)および一般」であった.
 研究発表では,教育学習支援システムや学習ログデータを活用するための機能開発を中心に,最近の取り組みが共有された.また,学習分析学会,教育システム情報学会LA部会共催によるイベント「人材育成の基盤としての次世代LAの可能性」が開催され,LAの現状・展望に関する話題提供に続き,LAを活用するための課題や,目指すべき教育像などが広く議論された.

東京工業大学オンライン教育研究会

報告者:渡辺博芳,小島一晃

 2019年3月27日(水),東京工業大学大岡山キャンパスにおいて,東京工業大学教育革新センターオンライン教育開発室主催によるオンライン教育研究会が開催された.
 研究会では3件の講演があり,まず最初にUniversity of Leedsの教授が「The changing nature of higher education in the digital age」と題して,University of Leedsにおける動画収録システムとその活用方法を紹介するとともに,高等教育におけるオンライン教育の展望や今後の高等教育の変容についての話題提供を行った.続いて本学の渡辺教授が「Collaborative Education Approach to Introducing Active Learning Subjects」と題して,帝京大学理工学部におけるアクティブラーニングのカリキュラム設計と教育効果についての事例発表を行った.最後に東京工業大学のJeffrey Cross教授が「Tokyo Tech’s edX MOOC quality assessment, analytics and future prospects」と題して,東京工業大学における動画教材作成支援の体制とオンライン教育の実施についての事例発表を行った.
 講演後の議論では,各大学における運用体制に関する質問のほか,今後オンライン教育の普及が進んだ将来における大学キャンパスの役割などについての意見が交わされた.