2019年度 研究会等報告

情報処理学会第28回教育学習支援情報システム研究会

報告者:宮崎誠

 2019年6月1日(土)に,岩手県立大学アイーナキャンパス(盛岡駅前サテライトキャンパス)において,情報処理学会教育学習支援情報システム(CLE)研究会の第28回研究会が開催された.今回の研究会のテーマは「eラーニングおよび一般」であった.
 研究発表では,授業設計に基づいたシステム開発やシステム活用による教育実践の報告,また手書きプロセスの情報を学習ログとしてラーニング・アナリティクスに利用するための標準フォーマットが提案されるなど,教育学習を支援する手法や技術の共有が行われ,発表された内容について広く議論された.

第10回教育ITソリューションEXPO

報告者:渡辺博芳,古川文人,小島一晃,高野芳恵

 2019年6月19日(水)~21日(金)に,東京ビッグサイト青海展示棟において,リードエグジビションジャパン株式会社主催による,第10回教育ITソリューションEXPOが開催された.
 本展示会には,約430社の出展があった.全体的には,2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化,英語が正式科目となるため,初等教育向けのプログラミング教育,英語教育のソリューションが数多く出展されていた印象を受けた.

2019年度ICT利用による教育改善研究発表会

報告者:渡部里美

 2019年8月9日(金)に,東京理科大学森戸記念館において,私立大学情報教育協会主催による2019年度ICT利用による教育改善研究発表会が開催された.本発表会は,分野ごとに3会場に分かれて45件の発表があり,名簿上では135名の聴講参加があった.
 本学の森一俊教授による「図学への反転授業の適用とその効果およびアクティブ・ラーニングに向けた提言」では,LMSやビデオライブラリを用いて反転授業を実施している図学での実践報告として,反転授業の導入前後での成績や学修時間など,様々な項目・観点からの比較検討の発表があった.
 LMS・ビデオ教材の活用や医療系の電子カルテの開発,チーム・グループ学修など他大学の多くの取り組みがあり,ICTを利用した教育改善の取り組みと効果,アクティブ・ラーニングによる教育方法の改善などの発表があった.

情報処理学会情報教育シンポジウムSSS2019

報告者:渡辺博芳

 2019年8月17日(土)~19日(月)に,大阪電気通信大学寝屋川キャンパス(大阪府寝屋川市初町)において,情報教育シンポジウムSSS2019が開催された.SSSは情報処理学会コンピュータと教育研究会と教育学習支援情報システム研究会の共同開催による「情報教育」と「教育の情報化」をテーマとしたシンポジウムである.従来は合宿形式で開催されていたが,2019は合宿形式ではなく,都市部での開催となった.
 招待講演は2件で,文部科学省の桐生崇氏から「教育現場における先端技術や教育ビッグデータの利活用について」,日本デジタル教科書学会会長の長谷川春生先生(富山大学)から「2020年度からの小学校プログラミング教育に向けて」の講演があった.その他,一般セッション35件,デモポスターセッション20件と多くの発表があり,参加者も多かった.
  本シンポジウムにおいて渡辺博芳教授が以下の発表を行い,優秀論文賞を受賞した.

  • 渡辺博芳,荒井正之,佐々木茂,盛拓生,古川文人,水谷晃三,眞坂美江子,塩野目剛亮,高井久美子(帝京大学),有本泰子(千葉工業大学):汎用的能力評価のためのルーブリックとチェックリストの提案

改正著作権法第35条関係におけるeラーニングや教材開発の対応についての情報交換

報告者:宮崎誠

 2019年8月20日(火),九州大学伊都キャンパス教材開発センターの芳賀先生を訪問し,改正著作権法第35条関係におけるeラーニングや教材開発の対応についての情報交換を行った.学内教職員への教育・学習における著作物の使用と著作権処理の現状,大学学習資源コンソーシアムでの議論の様子などを共有し,今後の改正著作権法第35条の施行に向けた取り組みについて議論した.また,同センターでの業務の様子やコンテンツ開発機材等を見学し,業務体制についてご紹介いただいた.

Blackboard Teaching & Learning Forum 2019 Tokyo

報告者:渡辺博芳,宮崎誠,高野芳恵,渡部里美

 2019年8月23日(金)に,昭和女子大学(東京都世田谷区)において,アシストマイクロ株式会社,Blackboard Inc.主催によるBlackboard Teaching & Learning Forum 2019 Tokyoが開催された.本学からは報告者の他,溝口佳宏准教授が参加した.
 今回のテーマは「『学修成果の可視化』には何が必要かを考える~アセスメントポリシー,定性的評価,ルーブリックとテクノロジーの役割~」である.基調講演として関西国際大学 学長の濱名篤氏から「『学修成果の可視化』には何が必要か?~アセスメントポリシー,定性的評価,ルーブリック等の活用~」と題した1件の講演があった.事例紹介として本学の渡辺博芳教授から「汎用的能力の育成と評価 ~帝京大学情報電子工学科の取り組み~」,大阪大学の白井詩沙香講師から「大阪大学におけるBlackboard Learnを用いた一般情報教育科目の実践事例」とQueensland大学(Brisbane, Australia)非常勤講師のDr Caroline Steelからの紹介で,3件の講演があった.その後,パネルディスカッションとワークショップが行われた.
 大学関係者や企業の方などBb導入の有無や関係性など関係なく,多くの参加者があった.

第11回 Japan Blackboard User Group 会合

報告者:渡辺博芳,宮崎誠

 2019年8月24日(土)に,昭和女子大学(東京都世田谷区)において,第11回 Japan Blackboard User Group(JBUG)会合が開催された.
 会合では,Blackboard社による開催挨拶の後,Blackboardの導入大学から活用方法や教育実践についての発表があった.
 まず,長崎大学古賀先生によるLTIによるBlackboardとAzure Media Servicesを用いたビデオ配信管理システムの開発の紹介,次に帝京大学溝口先生からBlackboardテストの項目分析を活用したテスト問題分析の紹介,広島大学隅谷先生による情報セキュリティ研修を通してのBlackboardとアカウント管理システムの連携についての紹介があった.続いて,Blackboard社から新たなUX(Ultraインターフェース)を搭載したBlackboard Learn SaaSについて紹介があった.最後に,アシストマイクロの閉会の挨拶をもって会合を終了した.

2019年度 教育イノベーション大会

報告者:高野芳恵

 2019年9月4日(水)~6日(金)に,アルカディア市ヶ谷において,私立大学情報教育協会主催による2019年度 私情協 教育イノベーション大会が開催された.今回のテーマは,「イノベーションを支える大学教育を考える」であった.
 1日目は全体会として,高等教育に対する国の取り組み,デジタル時代の人材育成,学生主体教育の仕掛け,大社接続によるAI活用教育の取り組み,AI技術を取り入れたデータサイエンス教育の取り組み,文部科学省選定の数理・データサイエンス教育強化拠点の取り組みについての講演が行われた.2日目はテーマ別の意見交流として,7つの分科会が行われた.3日目は各教員の取り組みについて79件の大会発表が行われた.また,2日目,3日目において,大学・企業連携によるICT導入・活用事例についてのポスターセッションが同時開催された.
 分科会の一つ「教育の情報化推進に関する著作権問題」では,2018年に改正された著作権法についての講演があった.今までの著作権法35条では認められていなかった異時公衆送信での著作物利用について,補償金やオプションライセンスの話があった.

教育システム情報学会第44回全国大会

報告者:渡辺博芳,古川文人,小島一晃,宮崎誠

 2019年9月11日(水)~13日(金)に,静岡大学浜松キャンパスにおいて,教育システム情報学会(JSiSE)第44回全国大会が開催された.
 本大会では,基調講演,公開シンポジウム,企業セッションのほか,11の企画セッションでの73件の発表,一般セッションでの90件の口頭発表,58件のインタラクティブ発表が行われた.
 大会初日には,会長の柏原昭博先生による「学習支援システム研究の核心と拡がり」というタイトルの基調講演があった.
 2日目には,昨年の大会中に地震による被災を経験したことを受けて「被災事例から考究するレジリエントな学び」をテーマとしたパネルディスカッションがあった.
 本学からは報告者の他,溝口佳宏准教授,宮原俊之准教授,水谷晃三講師,藤平昌寿職員が参加し,以下の発表を行った.

  • 水谷晃三:ダイナミックプロジェクションマッピングによるデバイスレスな教育学習環境の提案
  • 宮原俊之:学生による学生のための学習支援を中核とした学習支援モデルの開発 ~学習支援デスク設置の試みから~
  • 藤平昌寿:対話型コミュニケーションにおける意識変化の調査手法に関する考察
  • 井上仁,宮崎誠,北川周子:eポートフォリオ利用促進のためのSNS連携
  • 志賀栄文,渡辺博芳,高井久美子:工程表を活用した学習管理手法へのスマートフォンを使ったゲーミフィケーションの導入

情報処理学会第151回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳

 2019年10月5日(土)~6日(日)に,岩手県立大学アイーナキャンパス(岩手県盛岡市盛岡駅西通)において,情報処理学会コンピュータと教育研究会第151回研究発表会が開催された.研究論文セッション2件,学生セッション7件,一般セッション4件の発表があった.
 プログラミング教育・学習環境に関する研究,理解度や理解不足の点を分析しようとする研究,スマートデバイスを使った情報リテラシー教育や社会人のための仮想化環境の教育などの実践報告に関する研究など,さまざまな研究発表があった.学生セッションにおける研究発表にも興味深いものがあった.

情報処理学会 コンピュータと教育研究会152回研究発表会・第29回教育学習支援情報システム研究会

報告者:渡辺博芳,宮崎誠

 2019年11月15日(金)~11月17日(日),広島大学情報メディア教育研究センターにおいて,情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会152回研究発表会と第29回教育学習支援情報システム(CLE)研究会が合同開催された.今回の研究会のテーマは「教育機関等におけるクラウドサービス利用および一般」であった.
 CLEセッションでは,LMSや開発ツールの学習データを用いた学習の分析や予測・検討,記述問題自動フィードバックLTIツールの実装,ネットワークログを用いた学習活動の把握の提案,OpenApereo2019カンファレンスの参加報告など多岐にわたり情報の共有,議論が行われた.CEセッションでは,学生セッションも組まれるなど,プログラミングに関する研究を中心に多くの発表,議論が行われた.

The 27th International Conference on Computers in Education

報告者:小島一晃

 2019年12月2日(月)~12月6日(金)に,台湾のHoward Beach Resort Kenting,墾丁において,The 27th International Conference on Computers in Education(ICCE)が開催された.
 今回の会議のテーマは Intelligent Computing and Convergent Educationであった.本会議は例年通り「Artificial Intelligence in Education/Intelligent Tutoring System and Adaptive Learning」「Computer-supported Collaborative Learning and Learning Sciences」「Advanced Learning Technologies, Open Educational Content, and Standards」 「Classroom, Ubiquitous and Mobile Technologies Enhanced Learning」「Digital Game and Digital Toy Enhanced Learning and Society」「Technology Enhanced Language Learning」「Practice-driven Research, Teacher Professional Development and Policy of ICT in Education」の7つのサブカンファレンスから構成され,教育におけるICT利用を軸とする広範な領域の発表,議論がなされた.
 また,各サブカンファレンスのテーマに関連する4件の基調講演と3件の招待講演,3件のパネル討論が設けられるとともに,本会議前のイベントとして4件のチュートリアル,16件のワークショップ,その他Doctoral Student Consortia,Early Career Workshop,Student Wing Workshopが開催された.本学からは報告者の他,水谷晃三講師が参加し,以下の発表を行った.

  • Effects on Fostering Computational Thinking by Externalizing a Solution with Construction of a Problem-Solving Model Kazuaki Kojima and Kazuhisa Miwa
  • Proposal for Deviceless Learning Environments Instead of Environments Using Smart Devices Kozo Mizutani

 講演では,教育におけるAI,学習データ分析,仮想・拡張現実などの技術動向や,今後の社会におけるICTと教育学習のあり方など,教育学習支援における情報技術に関する広範な話題が提供された.一般発表においても,AI技術の教育応用や教育学習支援システム開発,学習データやセンシングデータ分析など,教育におけるICT利用の多様な側面についての情報交換が行われた.

大学ICT推進協議会2019年度年次大会

報告者:渡辺博芳,宮崎誠

 2019年12月12日(木)~14日(土),福岡国際会議場(福岡市博多区)において,大学ICT推進協議会2019年度年次大会が開催された.3日間の会期を通じて,66団体による81ブースの出展と1,300名の参加があり,2件の基調講演のほか,一般セッション,企画セッション,ポスターセッション,出店者セミナーが行われた.
 EDUCAUSEのPresident・CEOであるJohn O’Brien氏による基調講演「The State of Digital Ethics in 2019: Excitement, Caution, and Hope」では,技術革新に関するプライバシー等の倫理的な懸念と今後向かうべき道筋について,高等教育の立場から論じられた.また,東京大学大学院情報理工学系研究科教授の萩谷昌巳氏による基調講演「いまこそ情報教育革命なのか?」では,専門教育と一般教育の兼ね合い,大学入試の役割,統計教育との協働,学校教育と私的な教育の関係,生涯教育の位置づけと実現方法,MOOCの活用など幅広い視座から情報教育の変革が論じられた.企画セッションでは,室長の渡辺博芳教授が教育技術開発部会「LMSエキスパートの教員は担当する授業でどのようにICTを利用しているのか?」にて,LMSの活用を通じた授業実践について発表を行った.

大学ICT推進協議会学術・教育コンテンツ共有流通部会2019年度研究会

報告者:宮崎誠

 2020年2月15日(土),京都大学学術情報メディアセンター南館において,大学ICT推進協議会の学術・教育コンテンツ共有流通部会(AXIES-csd)2019年度研究会の「改正著作権法第35条 活用ガイドライン構築に向けて」が開催された.
 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム共同座長であり,千葉大学副学長の竹内比呂也先生による基調講演「著作物の教育目的利用環境改善の意義と教育機関に求められる対応」では,文化審議会や同フォーラムでのこれまでの議論を含めた改正著作権法第35条のポイントや補償金についての基本原則および教育機関として対応すべき事項等が示された.また,AXIES-csd著作権TF,広島大学の隅谷孝洋先生から本研究会の趣旨説明がされ,AXIES理事,京都大学情報環境機構長の喜多一先生からは大学が取るべき対応や体制のあり方が示された.