2017年度 研究会等報告

第8回教育ITソリューションEXPO

報告者:古川文人,渡辺博芳

 2017年5月17日(水)~19日(金)に東京ビッグサイトにおいて,リードエグジビションジャパン株式会社主催による第8回教育ITソリューションEXPOが開催された.本展示会には,800社の出展があった.
 本展示会では,帝京大学教員が講師をした次の3件のセミナーが開催された.渡辺LT開発室長による「アクティブ・ラーニングで講義ビデオを如何に活用するか?」,福島 健介 教育学部初等教育学科長による「町田・八王子小学校におけるプログラミング教育指導案開発と実践授業の報告」,宮原 俊之 教育方法研究支援室長による「帝京大学におけるICTを活用したアクティブ・ラーニングの試み」である.

Japan Blackboard User Group 第8回会合

報告者:渡辺博芳,渡部里美

 Japan Blackboard User Group(JBUG)第8回会合が,2017年5月27日(土)に広島大学東千田キャンパス(広島県広島市)で開催された.JBUGに先だって行われたテクニカルワークショップでは,Blackboardの機能拡張の仕組みによるソフトウェア(BuildingBlocks)の開発についての初歩的なレクチャーがあった. これについてはアシストマイクロ社が提供する専用のコースが設置されることになり,登録すればより詳しい情報が得られる.
 会合では,広島大学副理事(情報担当)の相原 玲二先生のご挨拶の後,ユーザグループの情報交換の場であるKnowledge Communityサイトの紹介と交流活性化の案が提案された. 次に,Blackbarod Learn活用事例として,広島大学隅谷先生による広島大学におけるLMS運用についての紹介,広島大学秋元氏によるBlackboardとMaharaの連携例の紹介,徳山高専・校長勇先生による国立高専の教育改革の取り組みの紹介があった. 続いて,Blackboard社のNick Benwell氏による授業設計に関するワークショップ,広島大学隅谷先生による著作権法改正に関する講演が行われ,最後にアシストマイクロ社から,今後のBlackboardの製品動向についての紹介があった.

情報処理学会第140回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会の第140回研究発表会が,2017年7月8日(土)に東北大学付属図書館(宮城県仙台市)において開催された.今回の研究会では,1件の特別講演と9件の一般発表があった. 東北大学堀田龍也教授による「次期学習指導要領と情報教育の動向」と題した特別講演では,今後の初等中等教育における情報教育の方向性に関する有益な情報が示された.一般発表は,プログラミングにおいて修得できる力の検討,プログラミングの行動分析方法の提案,情報系学生によるプログラミング教材作成,プログラミング教育におけるTAやSAの教育力向上の取り組みなど,プログラミング教育に関する発表が多かった.また,ワープロで適切に引用を行うための教育法や,ネットワークの仕組みを学ぶロールプレイ演習教材の開発など,興味深い発表が多かった.

平成29年度教育改革FD/IT理事長・学長等会議

報告者:渡辺博芳

 2017年8月2日(水)に私立大学情報教育協会主催「平成29年度教育改革FD/IT理事長・学長等会議」が青山学院大学において開催された. 本会議のテーマは「大学の教育力向上,教育の質保証に向けた改革とICTの活用」であり,2件の講演の後,全体討議,私立大学情報教育協会からの関連情報の提供があった.参加者名簿によると,66大学・7短期大学の122名が参加,うち学長19名,副理事長,理事7名,副学長・学長補佐30名,学部長・短期大学学科長24名,教務部長13名,随伴29名であった. 本学からは,波江野勉理工学部長と宮原俊之教育方法支援室長が参加し,渡辺博芳ラーニングテクノロジー開発室長が全体討議で話題提供を行った.
 最初に,日本学術振興会理事長の安西祐一郎先生による「学力の三要素を深化・発展させる大学教育改革とICT活用」と題する講演があった.この講演では,学力の三要素について振り返り,社会の変化と人材育成,入試改革における記述式問題と英語4技能入試の考え方,アクティブラーニング,ICT活用の将来像などについて述べられた.
 2つ目の講演では,京都光華女子大学の水野豊特命教授からEM(Enroll Management)とIR(Institutional Research)の組織的な取り組みについて紹介があった.IRに関して,京都光華女子大学ではスモールサイズIRを意識して取り組んでおり,情報収集が重複・肥大化してないか,情報収集は一貫しているか,情報収集に終わっていないかと言う点をチェックしながら進めているそうである.具体的な分析データやPDCAの活動なども述べられており参考になった.
 全体討議では,最初に山形大学の千代勝実教授から「全学横断基盤力テストによる卒業時質保証とステークホルダーによる外部評価の試み」,昭和大学の片岡竜太教授から「知識の創造を目指したICT活用による多分野連携フォーラム型授業の提案」と題する話題提供があった.その後,帝京大学から「大人数授業での反転授業と協働的授業モデルの取り組み」と題する話題提供を行った.引き続き,アクティブラーニングとICT活用に関する意見交換が行われ,最後に事務局から,学修ポートフォリオの導入,教育への情報化投資の実体,情報セキュリティ・ベンチマークテストなどに関する情報提供があった.

平成29年度ICT利用による教育改善研究発表会

報告者:渡部里美

 私立大学情報教育協会主催による平成29年度ICT利用による教育改善研究発表会が,2017年8月9日(水)に東京理科大学森戸記念館において開催された. 本発表会は,分野ごとに3会場に分かれて40件の発表があり,名簿上では140名の聴講参加があった.
 本学医学部の山本貴嗣先生による「医学教育におけるLMSを用いた予習復習テストの全講義への導入と試験成績の推移」では, LT開発室が導入と実施において支援しているLMSを用いた予習復習テストの紹介があり,期末テストの成績の推移を検討し, 学生の成績向上の一助となっていることが発表された.モバイルアプリ,クリッカー,3Dプリンタやビデオ教材など様々なICTを利用した教育改善の取り組みと効果,アクティブ・ラーニングによる教育方法の改善などの発表があった.

教育システム情報学会第42回全国大会

報告者:渡辺博芳,高井久美子,古川文人

 教育システム情報学会(JSiSE)第42回全国大会が,8月23日(水)~25日(金)の日程で北九州国際会議場にて開催された.
 本大会では,8セッションの企画セッションに60件の発表,114件の口頭発表,インタラクティブ発表60件の発表があり,400名を超える参加者があった.大会初日には,会長の仲林清先生による「学習システムデザインパターン論-破壊的イノベーションの視点から-」というタイトルの基調講演があった.二日目には,東京大学の萩谷昌己先生による「情報学のためでない情報教育」というタイトルの特別講演があった.
 本学からは渡辺博芳教授,若山昇准教授,溝口佳宏准教授,宮原俊之准教授,高井久美子講師,古川文人講師,水谷晃三講師が参加し,以下の発表を行った.

  • クリティカルシンキングの適応型テスト開発のシミュレーション 若山昇,宮澤芳光,梶谷真司,植野真臣
  • ティーチング・ポートフォリオの作成と更新に対する組織的な支援の初期検討 高井久美子,渡辺博芳,溝口佳宏
  • 教室環境の整備がアクティブラーニングの実現に与える影響 宮原俊之,谷村英洋,坂田哲人,大川内隆朗

平成29年度教育改革ICT戦略大会

報告者:渡辺博芳

 私立大学情報教育協会主催による平成29年度教育改革ICT戦略大会が,2017年9月5日(火)~7日(木)の3日間,アルカディア市ヶ谷において開催された.今回のテーマは,「学びの質向上を加速する取り組みとICT」である.帝京大学からは6名が参加した. 1日目は全体会であり,5件の講演とシンポジウムが開催された. 講演の中で関西国際大学理事長・学長 濱名先生による「産業界と協同した評価の観点・尺度の開発とICT活用」では,関西国際大学におけるディプロマポリシーの評価に関する取り組みを概観した後,インターンシップにおけるルーブリック活用の試みについて話をされた.この講演では,ルーブリックとチューニングはセットであり,継続的なワークショップを実施するなどの工夫がないとルーブリックを用いても評価がばらつくことなど,参考になる話題が多かった.

Blackboard Teaching & Learning Conference Asia

報告者:渡辺博芳

 10月4日(水)~5日(木)に,Blackboard Teaching & Learning Conference AsiaがシンガポールのUnited World College of South East Asiaにおいて開催された.Blackboard Teaching & Learning Conference Asia は毎年10月にアジア地区で開催されているBlackboardユーザのイベントである.今回の参加者は約170名であった.
このカンファレンスに,日本のBlackboardユーザとして初めて,大阪大学,長崎大学,拓殖大学,および本学から参加した.初日はキーノート講演があり,午後は4会場に分かれてユーザからの講演があった.2日目は4トラックでワークショップがあった.ユーザからの講演の中で日本から以下の発表を行った.

  • Haruo Takemura (Osaka University) : Strategic way to introducing Technology in Japan Higher ED using the Globalization of ducation
  • Hiroyoshi Watanabe (Teikyo University) : What is the key to successful flipped classrooms?

Japan Blackboard User Group in Singapore

報告者:渡辺博芳

 Japan Blackboard User Group(JBUG) in Singaporeは,2017年10月6日(金)に,Singapore Blackboard User Group(SBUG)と合同でTelstra Datacenter 7F Boardroomにおいて開催された.日本からは,大阪大学竹村先生,長崎大学古賀先生,拓殖大学佐々木先生,本学渡辺博芳教授が参加した.
 会合ではBlackboardのGlenn Philpott氏より,BlackboardのCloudサービスについての講演があり,その後,日本のユーザとシンガポールのユーザから発表があった.日本からは,大阪大学の竹村先生から,シンガポールからはNanyang Polytechnicの Grace Pheang氏,Polymall の Riccardo Zechnin氏からの発表があった.
 午後は,Blackboardが採用しているTelstarのデータセンターの見学を行った.データセンターでは人の出入りが厳重に管理され,電源やインターネット接続に冗長性を持たせていることが説明された.また,24時間体制で管理をしている様子が見られた.

情報処理学会第141回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会の第141回研究発表会が,2017年11月3日(金)~4日(土)に台湾師範大学(Taipei City )で開催された.コンピュータと教育研究会は国内の研究会であるが,国際セッションと日本語のセッションから構成することで,台湾師範大学において開催された.
 この研究発表会では基調講演1件,一般セッション6件,国際セッション6件の発表があり,国際セッションでは日本と台湾からの発表があった.Cheng-Chih Wu副学長とYu-Tzu Linさんによる基調講演では,Computational Thinkingを指向した教育カリキュラムに関して示唆を得られた.国際セッションでは,小学生向けのARを活用したコンテンツの発表,アンプラグドコンピュータサイエンスの実践に関する発表が興味深かった.

The 25th International Conference on Computers in Education

報告者:小島一晃

 The 25th International Conference on Computers in Education(ICCE)が,12月4日(月)~ 8日(金)の日程でニュージーランドのRydges Latimer Hotel, Christchurchにおいて開催された.
 今回の会議のテーマは Technology and Innovation: Computer-based Educational Systems for 21st century learners であった.本会議は例年通り「Artificial Intelligence in Education/Intelligent Tutoring System and Adaptive Learning」「Computer-supported Collaborative Learning and Learning Sciences」「Advanced Learning Technologies, Open Educational Content,and Standards」「Classroom, Ubiquitous and Mobile Technologies Enhanced Learning」「Digital Game and Digital Toy Enhanced Learning and Society」「Technology Enhanced Language Learning」「Practice-driven Research, Teacher Professional Development and Policy of ICT in Education」の7つのサブカンファレンスから構成され,教育におけるICT利用を軸とする広範な領域の発表,議論がなされた.
 また,各サブカンファレンスのテーマに関連する4件の基調講演と3件の招待講演,3件のパネル討論が設けられるとともに,本会議前のイベントとして1件のチュートリアル,13件のワークショップ,2組のDoctoral Student Consortiaが開催された.本学からは小島一晃助教が参加し,ワークショップ「The 10th Workshop on Technology Enhanced Learning by Posing/Solving Problems/Questions」において「Preliminary Study on Learning by Constructing a Cognitive Model Based on Problem-Solving Processes」の研究発表を行った.
 講演では,学習の個人化とAI技術の適用,21世紀型スキル育成のための教育技術と実装法,情報化の浸透による教育の変化など,最近の教育学習支援システムに関する広範な話題が提供された.一般発表においても,教育学習支援システムやその実践利用,学習者分析などを中心として,教育におけるICT利用についての情報交換が行われた.

情報処理学会第142回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会の第142回研究発表会が, 2017年12月8日(金)~10日(日) に松山大学(愛媛県松山市)において,情報処理学会教育学習支援情報システム研究会(CLE)と共催,情報電子通信学会技術と社会・倫理研究会(SITE)と連催で開催された.
 この研究発表会では,全部で31件の発表があり,3研究会の合同開催であったため,幅広い分野からの発表があった.機械学習の普及に向けた著作権法のあり方に関する発表,教育分野におけるオープンデータの整備の必要性に関する発表,大学連携におけるオンライン授業設計ガイドラインに関する発表,大学事務職員のITスキルチェックリストの開発に関する発表などが興味深かった.

大学ICT推進協議会2017年度年次大会

報告者:高井久美子,古川文人

 2017年12月13日(水)~15日(金)に広島国際会議場において,大学ICT推進協議会2017年度年次大会が開催された.3日間の会期を通じて,2件の基調講演のほか, 16の一般セッション,17の企画セッション,2つのポスターセッション,出展者によるセミナーが行われ,約90の展示ブースがあった.3日間の参加者は,大学関係者約600名,企業関係者約600名のおよそ1,200名とのことである.
 プログラムでは,教育実践系ではBYOD,教育サポート系ではTA・SA制度や電子教科書の発表が特に興味深かった.ラーニングアナリティクス(LA)の国内外の研究動向に関する企画セッションでは,学生の活動履歴を大学規模で収集・分析するLAの海外の研究事例やポリシー,国内の各大学の取り組みについて紹介があった.多くの大学ではまだ取り組み途中であるとの印象を受けた.

情報処理学会第143回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会の第143回研究発表会が,2018年2月17日(土)~18日(日) に武庫川女子大学(兵庫県西宮市)において開催された.招待講演1件,研究論文セッション1件,学生セッション12件,一般セッション12件の発表があった.
 招待講演は,大阪市立大学の松浦敏雄先生による「コンピュータと教育と私」と題する講演であった.松浦先生はインターネット創生期からネットワーク分野に携わり,その後,情報教育分野に長く貢献をされてきた.インターネット創生期の話は本学でインターネット接続を開始した当時が思い出され,懐かしさを感じた.一般発表では,高等学校における機械学習についての授業実践の発表が,これからの時代における教育として有用と感じられ,大変興味深かった.

情報処理学会第80回全国大会

報告者:渡辺博芳,高井久美子,古川文人

 情報処理学会第80回全国大会が2018年3月13日(火)~15日(木)に早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて開催された.今大会のテーマは「みんなの情報処理教育」であり,文部科学省 鹿野利春氏による特別講演「小中高で育む情報活用能力」をはじめとして,「カリキュラム標準J17と情報教育」,「新しい一般情報教育の知識体系」,「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」,「ソウル協定と情報専門分野の認定」「ファシリテータ講習」,「小中高で必修化されたプログラミング教育」など教育関連のテーマを取り上げた企画が多かった.
 本大会の「論文必勝法」のセッションでLT開発室の渡辺博芳室長がパネリストを務めた.表彰式においては,帝京大学理工学部卒業生の飯田和佐君が昨年の発表に対して「大会優秀賞」を受賞,帝京大学高等教育開発センター中鉢直宏助教とLT開発室の渡辺博芳室長が「山下記念研究賞」を受賞し,表彰された.また,学生セッションを含め,帝京大学からも多くの発表があった.

情報処理学会第144回コンピュータと教育研究会

報告者:渡辺博芳,高井久美子

 情報処理学会コンピュータと教育(CE)研究会の第144回研究発表会が2018年3月17日(土)~18日(日) に獨協大学(埼玉県草加市)において開催された.研究論文セッション2件,学生セッション14件,一般セッション14件の発表があった.年度末の研究会で発表件数が多く,学生セッションの一部はパラレルセッションとして実施されたが,4件の発表取消があったのは残念であった.
 この研究発表会において,帝京大学大学院理工学研究科において2017年10月からの半年間,内地留学を行っていた小山市立小山城北小学校の小島寛義教諭が「小学校におけるプログラミング教育で育てる資質能力を考慮した指導内容の検討」と題した発表を行った.全体としては,新学習指導要領を見据え,プログラミング教育や高等学校における情報教育に関する発表が多く,興味深かった.

情報処理学会第24回教育学習支援情報システム研究会

報告者:小島一晃

 情報処理学会教育学習支援情報システム(CLE)研究会の第24回研究会が,2018年3月20日(火)~22日(木)にかけて京都大学において開催された.今回の研究会のテーマは「ラーニング・アナリティクス(LA)および一般」であった.
 研究発表ではテーマに基づき,情報化が進んだ教育インフラから学習ログデータを収集・分析し,学習支援に活用するための取り組みが共有された.また,学習分析学会,教育システム情報学会LA部会,日本教育工学会SIG03「教育・学習支援システムの開発・実践」のイベントや,ラーニング・アナリティクスに関するシンポジウムも同時に開催され,LAの展望や課題などが広く議論された.